建物や背の高い木の間の空に、水平線のような雲ができることに初めて気づいたのは高校生の時だった。
部活か何かの帰り道、日はほとんど沈んで辺りは薄い青になっていた。左側には高台の上の団地、右側には線路沿いに植えられた大きな木、正面には坂の下の住宅街があった。その三つに囲まれたU字型の空の底のほうに、真っ直ぐに水平線のような青黒い雲が沈んでいて、その空間に沈澱しているみたいだと思った。もしくは黒く集まった雲がこちらを飲み込もうとしているようでもあった。
初めて見た光景で、すごいものを見てしまったと思っていたが、それ以来ときどき見ることができている。狭い空だけでなく、広い空でも水平線の雲は見ることができた。
ありがたみはだいぶ減ってしまったが、それでも水平線のような雲を見つけるたび、虹を見つけた時のような気持ちになる。昨日の虹は綺麗だった。