海を見た時、何度も写真に撮ってきた。海を見る度、このチラチラと光る波を、真っ直ぐで何もなく見える水平線を、人工物がさほど影響を与えられそうもない大きさを、そして美しさと清々しさを何度も写真に収めようとしてきた。もちろん完璧に映し出せたことはなく、記録としてデータがパソコンの中で散り散りに溜まっていくだけだった。
展示のために初めに描いたのは、兵庫県立美術館の海側で見た景色だ。美術館のある岩谷駅は各駅電車しか止まらず、そこから10分ほど歩く。冬は寒さに耐えながら、夏は暑さに耐えながら、一人で、あるいは友人と、あるいは学校の行事のため集団で足を運んだ。ここから見える海は広々とした感じではなかったかもしれない。むしろ大きな川と言われてもそう見えた。海の上の道路がある日急に綺麗に見えて、写真に撮ったのだと思う。なんの気無しに向かい、撮った記録が今また私の目に止まり、記憶をめぐらせている。
このように海の写真が少しばかりある。
だから海を見た日を描こうと思う。