台風前夜
- ushisansan21
- 8月27日
- 読了時間: 2分
チラシを見た。横尾忠則さんの3枚ほど絵が載っているポスターで、そのうち一番大きく載っていたのが、「宮崎の夜-台風前夜」という絵だった。
「冒険王・横尾忠則」という展覧会のチラシだった。それは高校生のときで、あの頃美術館へ行くとか展覧会を見るという楽しみにまだ無弾着だったのに、この絵が見たいと思って美術館へ行った。見たかった絵は展示室入ってすぐ左に飾ってあったと記憶している。見たかった絵もう出てきた、と思った気がする。全然違ったらすみません。1人だったから随分ゆっくり見ることができ、他の絵を見ては、何度も「宮崎の夜-台風前夜」の前に戻った。遠くからみても近づいてみても見足りなかった。道は分かれており、夜に赤く光る街灯と地面が、真っ赤な薔薇が、私の心を離さず、ここではない何処かへ連れて行かれそうだったのに、そこに確かにあるという感じでその場を離れるのがもったいない気持ちになる。この絵のようなY字路のシリーズはいくつか飾ってあり、どれも好きだったけれど、「宮崎の夜-台風前夜」が最も好きだ、今も。きっと長い嵐の前なのだ。嵐の予感を夜のY字路に鎮めているようでもあり、胸騒ぎのような感動だった。そして私もこんなふうに絵を描きたいと思ったのだった。
もともと絵も、イラストも、漫画も好きだったけれど、だけどもという感じで、芸術に関する大学に行くのか決めあぐねていたのに、この絵を見て吸い込まれるように決めてしまった。ひとつ年上の友達が通っていた画塾に私も行きたいと思った。私は彼女のことも好きだった。
この絵のポストカードを買った。いつか図録でもその絵をみて、あの時の感動を思い出してみることが度々あった。でも、またあの大きな台風前夜の前に立ってみたいと、今思う。